逆引き大学辞典逆引き大学辞典

編集者になるには?求められる資質・能力や進むべき進路を紹介

2022.08.05

カテゴリー:
編集部で電話をする編集者

編集者になるには?求められる資質・能力や進むべき進路を紹介
 
漫画や小説、ライトノベルなどの本や雑誌を作る仕事に憧れたことはありませんか?一冊の本が完成するまでには、多くの人が関わっていますが、その中でも本や雑誌の編集を担当するのが編集者です。
この記事では、編集者になるための方法や、求められる資質・能力について解説します。編集者になるための勉強ができる大学・学部や、有名編集者の出身大学なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください!

編集者とは?

編集者とは、本や雑誌の企画立案から完成するまでを担う仕事です。一冊の本が完成するまでの工程には、作家やライター、デザイナー、フォトグラファー(写真を撮るプロ、カメラマンともいう)となど、さまざまなスペシャリストが関わっています。編集者は、それぞれの分野で適任と思われるスペシャリストに仕事を依頼し、その仕事がうまく進むように調整しながら、全体を取りまとめる進行役を担うのです。

一口に編集者といっても、扱う本や雑誌のジャンルにより、仕事の範囲は違ってきます。例えば、漫画編集者の場合、漫画家の作品執筆をサポートするのはもちろん、ヒットしそうな作品のコンセプトを考えたり、あらゆるコネクションを使って優秀な原作者の発掘にあたったりすることも。ファッション誌であれば、掲載する旬のモデルや、その魅力を引き出すフォトグラファーの手配なども編集者にとって重要な仕事です。

担当する仕事の範囲は非常に幅広く、担当する本や雑誌を作り上げるまでのあらゆる工程に関わっている編集者。ベストセラーになる本や完売する雑誌を仕掛ける編集者は、世の中に大きなインパクトを与える存在といえるのです!

編集者と作家、ライターの違い

編集者は、本や雑誌の制作全体を担う仕事です。本の企画や制作進行、校正といった仕事を担います。雑誌によっては原稿を編集者自身が執筆することもありますが、作家やライターといったプロの書き手に依頼するのが一般的です。
素材を作るのが作家やライター、またはイラストレーターやフォトグラファーで、それらの素材を「集めて編み直す」のが編集者です。新鮮な素材の味を、料理で引き出す料理人のようなものと考えるとイメージしやすいのではないでしょうか?

編集者の仕事内容

校正作業を行う編集者

 
編集者の仕事は、主に次の3つに分けられます。ここでは編集者の仕事の内容を解説します。

・編集会議での企画出し
本や雑誌の特集をどのようなコンセプトにするか、どんなメッセージを伝えるかを決めるのが編集会議における企画出しです。本や雑誌の売上部数は、企画の良し悪しで決まります。世の中の人が興味を持っていることや、知りたいと感じていることをリサーチし、ヒットする本の企画や雑誌の特集を提案していきます。
難しいのは、ありきたりな企画では注目されないし、斬新すぎる企画は誰にもついていけないということ。新しさとニーズのバランスを保ちつつ“半歩先”の企画をまとめ上げていくのは、編集者としての腕の見せ所です!

・ディレクション
本や雑誌の制作に必要な各方面のスペシャリストを手配し、制作に関する指示を出して進めていくことをディレクションといいます。本の企画から書店に並ぶ日までは限られた期間しか確保できないため、複数の仕事を同時並行で進めることも珍しくありません。進行表を見ながらスケジュール管理を行い、各関係者に仕事の進み具合をヒアリングし、時には原稿を督促したり、相談にのったりしていくことも編集者の重要な仕事です。

・プロモーション
本や雑誌が完成し、書店の店頭に並ぶようになった後も、まだまだ編集者の仕事は続きます。書店でのサイン会など、本に関するプロモーションイベントなどを担当するのです。本の制作に携わってくれた作家などのために、完成した本が売れるよう全力を尽くすことも編集者の大切な仕事!
最近ではウェブメディアやSNSをプロモーションに活用する出版社が増えているため、編集者みずからウェブメディアに登場してプロモーションしたり、SNSで発信して本や雑誌の特集の宣伝を行ったりすることも。

編集者の仕事のやりがい

編集者は、自分が担当した本や雑誌がベストセラーになったり、作家が注目されてインタビューを受けたり、雑誌が完売したりしたときに、「自分の企画が世の中に認められた」と大きなやりがいを感じることができます。担当した本を原作として映画やテレビドラマ化、アニメ化すれば、さらに自分が手掛けた企画が多くの人に評価されていると実感できるのです。

ただ、一冊の本が完成するまでには、締め切り日になっても作家の原稿執筆が思うように進んでいなかったり、理想とする雑誌のデザインがなかなか実現できなかったりと、ディレクターとして悩ましい判断を迫られることも…。
それでも、制作に関わっている人たちと密なコミュニケーションを図り、完成に向けて前進させなくてはなりません。多くの困難を乗り越えて完成した本を手にしたときには、大きな感動を味わうことができるでしょう!

編集者の仕事の流れ

編集者の仕事は、どのように進めていくのでしょう?ここでは、本や雑誌ができるまでに絞って、編集者の仕事の流れを順に見ていきます。

1. 企画の立案

本や雑誌特集の企画を考え、企画書にまとめます。「売れそう」「話題になりそう」といった直感だけに頼るのではなく、きちんと調査を行ったりデータを集めたりした上で、根拠のある企画を立てることが大切です。企画内容が固まったら編集会議で提案し、編集長に企画を承認してもらう必要があります。

2. 予算の策定

企画が採用されたら、本やページが完成するまでの予算計画を立てます。原稿料や撮影料のほか、デザインやイラスト制作料、印刷・製本代など、制作にかかる原価を計算するのです。多くの予算を確保すれば凝った装丁の本が作れますが、売れなければ赤字になってしまいます。多くの場合は予算に限りがあるので、その中でいかにいいものを作れるか、売れるようにするのか、バランスを考えることが大切です。

3. 制作スケジュールの作成

本や雑誌の発売日は、企画段階で決められているケースがほとんどです。編集者は発売日に間に合うよう、制作スケジュールを作成して予定を組んでいきます。作家やライター、イラストレーター、デザイナーなど、各分野の担当者に短い期間で仕事を依頼しなければならないケースもあるため、それぞれと交渉・調整しながら現実的なスケジュールに落とし込んでいくのも編集者の大事な役割といえます。

4. 制作依頼

作家やライター、デザイナー、フォトグラファー、イラストレーターなどに制作依頼をします。編集作業を請け負う編集プロダクションの協力を仰ぎ、本の編集作業そのものをお願いすることも。

5. 原稿チェック

作家やライターなどから原稿が上がってきたらチェックします。依頼した趣旨に沿って書かれているか、予定しているページ数に収まるか、特定の誰かを傷つけるなど問題のある表現はないかなどを確認していくのです。依頼内容と異なる点が見つかった場合は、修正や加筆の依頼をします。

6. 入稿・校正

原稿や写真、イラストを本や雑誌の形にするには、DTP(デスクトップパブリッシング:パソコン上で印刷用データを制作すること)による組版作業をする必要があります。デザイナーやオペレーターの手で組み上がったゲラ(ページ)を細部までじっくりと確認し、校正していくのも編集者として重要な仕事。発売後に内容の漏れや誤りが見つかると大きなトラブルになるため、校正は校正者など専門職の手も借りて、繰り返し行われます。

編集者の年収

編集者というと、有名な大手出版社をイメージする人も多いと思いますが、出版社の規模は社員数名から数百名規模までさまざまです。また、出版社から編集の実作業を任されて担当する編集プロダクションにも編集者が在籍しています。編集者の年収は、所属する会社の種類や規模によって大きく異なります。

<編集者の報酬例>
・大手出版社:800万〜1,000万円
・中小出版社:300万〜600万円
・編集プロダクション:250万〜450万円

出版社には長い歴史を持っていたり、キャラクタービジネスも行っていたりして有名な企業も多く、就活生には高い人気があります。ただし有名出版社ほど就職は狭き門なので、編集プロダクションや中小出版社で編集経験を積み、そこからステップアップして大手出版社への中途入社を目指す人も少なくありません。

編集者に必要な資質と能力

取材する編集者

 
編集者は、非常に幅広い仕事に取り組むため、求められる資質・能力も多岐にわたります。携わる本・雑誌のジャンルによって比重は変わりますが、ここでは編集者にとって重要な資質・能力をまとめました。あなたは、どれぐらいあてはまりそうですか?

企画力

有名な編集者の多くは、優れた企画力を持っています。編集者のユニークな発想や着眼点が、ベストセラーの企画につながるのです。作家やライターが、編集者の発案によって新たな分野にチャレンジし、成功することもあります。企画力には、編集者としての実力が表れるといっていいでしょう。

つまり、普段から発想力が豊かでアイディアを考えるのが好きな人や、好奇心旺盛でいろいろなことに興味・関心を持つ人は、編集者としての資質を備えている可能性大。編集者の資質を磨いていく意味でも、企画力を磨いていってくださいね!

段取り力

複数の仕事を同時並行で進めていく編集の仕事では、段取り力がマスト!やるべきことを整理し、優先順位をつけてテキパキと行動に移せるチカラは、編集者にとって欠かせない資質です。

やるべきことを小さな単位に分けて書き出し、一つひとつ締切日を決めて取り組む段取り力は、高校生の皆さんでいえば、テスト勉強や部活のメニューをこなすときにも必要ですよね。日頃から編集者を目指すためのトレーニングとして、段取り力を伸ばしていきましょう!

コミュニケーション力

編集者はさまざまな関係者と協力しながら一冊の本を完成させていきます。ライターやフォトグラファーなど、クリエイティブのプロが気持ち良く仕事ができるように気を配り、相手に合わせた柔軟なコミュニケーションが必要です。
実現したい企画や依頼したい仕事内容を正確に伝えると同時に、相手の希望をしっかり聞くことも重要な能力。思い込みや勘違いで仕事を進めてしまわないようにしなければ、いい編集の仕事はできないのです。

さまざまな立場や年齢の人とコミュニケーションをとる場面は、高校生活の中でもきっとあるでしょう。想像力を働かせて相手の想いを理解し、自分の想いを伝える練習をしていくと、編集者として必要な能力を伸ばすことができそうですよね。

校正力

編集者が編集作業において、とても気を使うのが校正です。校正とは、原稿やページの文字や内容、デザインなどの誤りや抜け・漏れを、あらかじめ修正する仕事。校正が不十分な本や雑誌が読者の手に渡ってしまうと、出版社としての信用に関わるのです。
編集者には、ページの文字や写真などを隅々までチェックする慎重さが求められます。細かな作業が得意で、苦痛に感じない人に適した仕事といえるでしょう。

編集者になるための方法とは?

図書館にたたずむ編集者志望の大学生

 
編集者を目指すには、どのような進路を選ぶのがベストなのでしょう?編集者の世界の現状と併せて、編集者を目指す方法や編集者になった後のキャリアプランについて紹介します。

編集者の世界の現状

高校生の皆さんは、「出版不況」という言葉を聞いたことはありますか?インターネットやスマートフォンが普及して、娯楽が多様化したことによって出版物の売れ行きは下降しつづけています。特に、小説や雑誌は厳しく、「小説が売れない」「雑誌が売れない」といわれる時代になっているのです。

ただ、ジャンルによっては好調な出版物もあります。書店を訪れたとき、高く積まれたビジネス書を目にしたことがある人もいるかもしれませんが、2017年頃からビジネス書の売上はじわじわと上昇傾向にあります。また、皆さんおなじみのコミックの売上は、紙の本と電子書籍ともに大きく伸びていて、刊行点数も過去最多を記録しているとか!

このように、出版業界では伸びているジャンルと縮小しているジャンルの差が激しいのが特徴です。自分がどのジャンルに携わりたいのか、そのジャンルの将来性や世の中のニーズを知っておきたいところですね!

編集者になるための勉強ができる大学・学部

編集者になるための大学・学部は、文学部を想像する人が多いかもしれませんね。実際には、教育系出版社の編集者が教育学部出身だったり、理学書や工学書などの編集者が理工学部出身だったりと、編集者の出身大学や学部はさまざま。編集者として幅広い知見を身につけておくには、どの学問分野も役立つともいえます。
ただ、有名な大手出版社への就職を目指すのであれば、学歴は重視される傾向があります。下記は有名な編集者の出身大学。早稲田大学や慶應義塾大学など、難関大学出身者が多いのが特徴です。

<有名な編集者の出身校>
・井上伸一郎(KADOKAWA 元『月刊ニュータイプ』編集長、早稲田大学 第二文学部中退)
・樹林 伸(講談社 元『週刊少年マガジン』編集者、早稲田大学 政治経済学部)
・木俣正剛(文藝春秋 元『週刊文春』『月刊文藝春秋』編集長、早稲田大学 政治経済学部)
・久保雅一(小学館 元『月刊コロコロコミック』副編集長、早稲田大学 教育学部)
・見城 徹(幻冬舎社長 慶應義塾大学 法学部)
・佐渡島庸平(コルク代表 元『週刊モーニング』編集者、東京大学 文学部)
・新谷 学(文藝春秋 元『週刊文春』編集長、早稲田大学 政治経済学部)
・鳥嶋和彦(集英社 元『週刊少年ジャンプ』編集長、慶應義塾大学 法学部)
・中瀬ゆかり(新潮社 元『新潮45』編集長、奈良女子大学 文学部)
・堀内丸恵(集英社会長、成蹊大学 法学部)
・箕輪厚介(幻冬舎編集者・実業家、早稲田大学 第一文学部)
※50音順・敬称略

編集者は作家やライターをはじめ、アイドルや政治家、学者などと仕事を進めることが求められる職業。幅広い知見を持ち、卓越した先見性で新しい企画を提案していったり、医学書など高い専門性の書籍を編集したりするには、一定以上の学力が必要になることもあるのです。

必要な資格や受験すべき試験

編集者になるために必須となる資格はありません。むしろ、実力や経験が重視される世界のため、特定の資格を取得すれば通用する世界ではないと考えたほうが良さそうです。

ただ、編集実務に役立つものに、校正力アップにつながる資格が挙げられます。例えば、日本エディターズスクールが実施している「校正技能検定試験」は編集者として必要な校正のスキルを伸ばす上で役立つでしょう。校正の基本的な観点や校正記号の使い方が身につくので、編集者としてひとつの武器となるはず。

編集者になるために目指すべき就職先

編集者を目指すための就職先には、主に「出版社」と「編集プロダクション」の2つが挙げられます。

・出版社
出版社の編集部は、編集者になるための王道ともいえる就職先です。大手出版社は新卒採用も実施していますが、就活生に人気があり、競争率もかなり高め。中小規模の出版社の中には比較的入社しやすい企業もあるものの、新卒採用枠が若干名、あるいは「編集経験数年を経た者のみ」というケースも多いです。

・編集プロダクション
出版社から編集の実作業を請け負っている編集プロダクション。未経験の学生には入りやすく、編集経験を積むにはもってこいの環境といえます。
ただし、出版社と比べて待遇面はあまり期待できないケースが多いかもしれません。編集プロダクションで実績を積んで、出版社の編集部員へとステップアップを目指す人もいます。
出版社が多い大都市圏の大学生に限られますが、大学生の頃から出版社や編集プロダクションでアルバイトスタッフとして働き、そのまま正社員になるルートもありますよ。

編集者になった後のキャリアプラン

赤字を入れるフリーランス編集者

 
編集者になってから、編集経験や人脈を活かして、さまざまな分野で活躍できる可能性があります。一例として、下記のようなキャリアプランが想定できるでしょう。あなたなら、編集者をステップにしてどんな仕事に就きたいですか?

作家、ライター

編集者として数多くの作品や文章にふれてきた経験を活かし、みずから書き手として、作家・ライター業で活躍するパターンがあります。ヒットする本の特性を実体験から知り尽くしているため、読者が求めているものを生み出しやすく、そこでは編集者のバランス感覚が大いに役立つでしょう。

ウェブマーケター

「マーケティング」という言葉をご存知でしょうか?マーケティングとは、簡単に言うと「売り込まなくても売れる仕組みを作ること」。人手不足の昨今、多くの企業がインターネットを使ったウェブマーケティングに力を入れています。
そこで編集者が備えている「世の中で求められているものを敏感にキャッチした企画を作る」能力を活かし、ウェブマーケターになる道も!本や雑誌のプロモーションに携わった経験があれば、消費者が求めているものを感じとり、消費者が思わず欲しくなるコンテンツ(情報)を作れるはず。実際、不況の出版業界から飛び出した編集者出身のウェブマーケターは、企業のウェブマーケティング部門で重宝されています。

企業広報

編集者としてメッセージを発信しつづけてきた経験を活かして、企業の広報担当者として活躍する道があります。近年は広報の果たす役割が大きく広がっており、企業価値の向上に重要な役割を果たすことも。編集者として身につけてきた情報発信力が役立つはずです。

フリーランス編集者

編集者として独立し、フリーランス編集者になる方法も。特定の出版社に所属せず、複数の出版社に企画を持ち込み、本や雑誌のディレクションを行うのです。ヒット作を生み出せるフリーランス編集者になれば、出版社の会社員よりも多くの名声と収入を得ることも夢ではないかも!

ヒット本を生み出す編集者への道筋を「JOB-BIKI」で探そう

本や雑誌の企画から完成までを担う編集の仕事。世の中で求められているものをキャッチして、本や雑誌という形で伝えるやりがいのある仕事ですよね。
出版業界全体としての需要は縮小傾向にありますが、人気のジャンルや将来性のある分野を見極めて、編集者として活躍する道をぜひ見つけてください。「JOB-BIKI」の検索も参考にすることをお忘れなく!

https://www.gyakubiki.net/jobbiki/

よく読まれている記事

タグで記事を絞り込む