インテリアデザイナーになるには?求められる資質・能力などを解説
2022.07.29
インテリアデザイナーになるには?求められる資質・能力などを解説
オフィスビルや街のカフェなどおしゃれな空間を見つけたとき、つい立ち止まって見入ってしまった経験がある人は多いはず。優れたデザインと快適さが両立する空間は、誰がどんな風に考えて設計しているのか…気になってしまう人には「インテリアデザイナー」が向いているかもしれませんよ。
この記事では、室内空間の設計・演出を手掛けるインテリアデザイナーの仕事についてご紹介します。インテリアデザイナーに求められる資質・能力や目指す方法、進むべき大学・学部や有名なインテリアデザイナーの出身大学などについてご紹介しますので、ぜひ進路選びの参考にしてください!
インテリアデザイナーとは?
インテリアデザイナーは、建物の内装やそこに設置する家具類をデザインするエキスパートです。「インテリア」というと住宅やホテル、カフェなどの建物をイメージするかもしれませんが、インテリアデザイナーは船や航空機など乗り物の内装を手掛けることもあるんです。
インテリアデザイナーは室内空間を総合的にプロデュースし、設計・デザイン・配置を考えます。仕事の依頼内容次第ではありますが、建物などの設計段階から関わることもあれば、設置する家具やカーテン、雑貨の一つひとつまでこだわって決めていくことも。おしゃれで快適な空間を演出する、本当にクリエイティブな仕事なのです。
インテリアデザイナーと空間デザイナー、インテリアコーディネーターの違い
インテリアデザイナーとよく似た仕事に、「空間デザイナー」「インテリアコーディネーター」があります。どのような違いがあるのか、疑問に感じたことはありませんか?
インテリアデザイナーと空間デザイナーの大きな違いは、手掛けるデザインの範囲にあります。インテリアデザイナーが手掛けるのは「インテリア」、つまり建物の内装がメインです。空間デザイナーは室内空間に限らず、屋外も含めた空間の演出に携わります。例えば、商業施設のショーウインドーやイルミネーションなどをイメージするとわかりやすいですね。
ただ、空間デザイナーがインテリアデザイナーの仕事を兼ねていることもあれば、その逆の場合も。一般的には、屋内外の大掛かりな装飾物を手掛けることもあるのが空間デザイナー、細部の機能性も考慮して室内のデザインを手掛けるのがインテリアデザイナーと考えてください。
一方でインテリアコーディネーターは、既存の家具を選び、組み合わせることでインテリアを作り上げる仕事。インテリアを企画・設計から施工まで行うインテリアデザイナーは、「無から有を作り出す」という点で大きく違うのです。
インテリアデザイナーの仕事内容
インテリアデザイナーの仕事は、大きく2つに分けることができます。
ひとつは室内環境のデザインや設計です。まずは依頼主の希望をヒアリングし、イメージに合ったデザインを提案。そして、コンセプトに合う素材や配色、形状などを細部まで考え、3Dデザインソフトを使って設計します。施工が始まってからもイメージどおりに工事が進んでいるか確認するために立ち会ったり、施工業者に直接指示を出したりすることもあります。
もうひとつは、室内に設置する家具やカーテン、照明、ラグ、カーペットまでをデザインする仕事です。イメージに合わない物が空間に置かれていると、全体の雰囲気を壊してしまいますよね。素材や色合いを慎重に検討し、サンプルや試作品を取り寄せて、ひとつずつ決めていくのです。
インテリアデザイナーはこのようにインテリア全体を丁寧に作り上げていく役割を担っています。仕事のイメージはわいてきましたか?
インテリアデザイナーの仕事のやりがい
インテリアデザイナーは、インテリアの企画から完成までを見届けるため、ひとつの仕事が完了するまで時間がかかります。インテリアの企画設計から完成まで数ヵ月かかることもあれば、大規模プロジェクトの場合は数年にわたることもあるのです。
インテリアデザインの仕事は、イメージどおりに進むことばかりではありません。時にはアイディアが思うように形にならず悩んだり、依頼主や施工業者との板挟みになったりすることもあるのです。問題を解決していき、完成した空間を目にしたときには大きなやりがいを感じられるでしょう。
見た目は良くても、とても寒かったり暑かったり、または圧迫感を感じたりすれば居心地は悪いですよね。
インテリアは「おしゃれ」「洗練されている」といった見た目だけでなく、実際に利用する人にとって快適で居心地が良いと感じられるかも大切なポイントです。
そうして自分が手掛けた仕事が形として残り、多くの人に愛されていくことをぜひ想像してみてください。多くの人に喜ばれているインテリアを見たとき、やりがいを実感できそうですね。
インテリアデザイナーの仕事の流れ
インテリアデザイナーの仕事は、まず依頼主の要望をしっかりとヒアリングすることから始まります。建物などの間取りや設計図を確認しながら、依頼主がどのような空間をイメージしているのか、予算はどの程度かけられるのかを詳しく聞き取ることが大切です。
次に、ヒアリングで得た情報をもとにプランニングを行います。プランニングは手書きのラフスケッチで作成することもあれば、デザインソフトを使って作成することもあるなど、進め方は人によってまちまちです。プランを依頼主へ提案し、提案が通ったら施工業者に見積もりを依頼します。
室内に配置する家具や照明についても依頼者から要望を聞き、イメージに合うデザインや素材、色彩の物を提案します。必要に応じてサンプルや試作品の手配をし、イメージとのずれがないか十分に確認しながら一つひとつ慎重に決めていくのです。
施工中もプランどおりに進んでいるかチェックするため、立ち会って監理します。施工が完了してインテリアを配置し、依頼主へ引き渡すところまでが一連の仕事の流れです。
インテリアデザイナーの年収
インテリアデザイナーの平均年収は、「令和3年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)によると、約478万円とされています。
インテリアデザイナーは、自営業者やフリーランスとして働いている人も少なくありません。インテリアデザイナーの約67.4%は自営またはフリーランスのため、一般的な会社員の平均年収を大きく上回る収入を得ている人もいると思われます。
インテリアデザイナーに必要な資質と能力
インテリアデザイナーに必要な資質・能力と聞くと、何が思い浮かぶでしょうか。まず、「インテリアが好き」なことは大前提となるはず。ここでは、インテリアデザイナーとして必要な5つの資質と能力を紹介します。
好奇心
世の中には優れたインテリアデザインが数多くあります。同じ空間をデザインするとしても、手掛けるインテリアデザイナーによって発想は十人十色。インテリアデザイナーになり、第一線で活躍し続けていくには、さまざまなインテリアデザインに興味や疑問を持ち続ける好奇心が必要といえます。
あなたが「なぜこの部屋はこのデザインにしたのだろう?」「どうしてこの照明を選んだのだろう?」と日頃から興味を持つことが多いタイプなら、インテリアデザイナーとして必要な好奇心が備わっている可能性はアリでしょう!
探究力
インテリアデザインには建築や色彩、デザイン、素材に関してなど、多くの分野にわたる知識が求められます。各分野で今何が注目されているのか、新しい技術や理論はどうか、常にアンテナを高く伸ばしておくことが大切です。インテリアデザインに関わりのある分野に強い興味・関心を持ち続け、新しいことを学ぼうとする探究力がマストな仕事といえます。
デザイン力
インテリアデザイナーは、デザインのスペシャリストです。優れたデザイン力を備えていることは必須でしょう。室内全体の調和を考え、立体的なデザインを構成する能力が求められます。また、頭の中で考えたデザインを表現できることも重要なスキルのひとつ。アイディアを依頼主に提案するには、3Dデザインソフトや設計用ソフトを使いこなす能力が求められます。
具体的には、下記のようなソフトを使えるようにしておく必要があるでしょう。
<インテリアデザインに必要なソフト>
・デザインソフト:CLIP STUDIO PAINT、Illustratorなど
・画像編集ソフト:Photoshopなど
設計力
インテリアデザイナーは、既存の家具などを組み合わせてインテリアを演出するインテリアコーディネーターと違い、自分自身でインテリアを設計します。インテリアを設計するには、設計用ソフトのVectorworksやAutoCADなどを駆使して、アイディアを図面に起こすスキルが必要です。
インテリアデザイナーによる図面に従って施工業者が工事を進めていくため、建築の基本的な知識と設計力はマスト。立体的な模型を作るのが得意な人や、イメージを形にして表現するのが得意な人は、インテリアデザイナーの素質アリです!
マクロ視点とミクロ視点
インテリアデザインでは、インテリアの設計図面を引いたり、インテリアの施工前に建築模型を作成したりすることがあります。建築模型はインテリアデザイナー自身が作ることもあるので、ある程度は手先が器用なほうがいいのですが、それはマストではありません。大切なのは、インテリアに対して全体への俯瞰と細部への目配りができること。いわゆる「鳥の目と虫の目」で、設計や模型作りをするチカラのほうが重要です。模型作りにおいては丁寧な作業ができることも大事ですね!
インテリアデザイナーになるための方法とは?
インテリアデザイナーになるには、どんな勉強をすればいいのでしょうか。ここでは、インテリアデザイナーの世界の現状や必要な資格、目指すべき就職先などについて確認しておきましょう。
インテリアデザイナーの世界の現状
インテリアデザイナーは、一人前になるまでにそれなりの年数が必要な職業だといわれています。大学を卒業してすぐにインテリアデザイナーとして活躍できることはほとんどなく、若手の頃はベテランのインテリアデザイナーのもとについて経験を重ねる必要があるのです。
目安として、一人前になるまでに10年はかかることでしょう。プロフェッショナルの世界なので、決して甘い世界ではないことは理解しておかなくてはいけませんね!
また、近年は少子高齢化が進んでいることから、住宅や建物に求められる機能性も変化しています。インテリアデザイナーには、スタイリッシュなデザインを追求するだけでなく、高齢者や障害がある人にも過ごしやすい空間を提案する力が求められているのです。利用する人のライフスタイルを思い浮かべながらデザインするため、想像力が求められるでしょう。
インテリアデザイナーになるための勉強ができる大学・学部
インテリアデザイナーになるための勉強をするには、大学の建築学科、あるいはデザイン専門学校に進学する方法があります。大学によっては工学部にデザイン学科が設置されていることもあるように、理系の学部・学科を探していくのがコツです。
<インテリアデザイナーになるための勉強ができる学部・学科>
・デザイン学科
・建築学科
・工学部建築・設備工学科
・社会園芸学科
・環境デザイン学科
・メディア造形学部
・環境デザイン学科
・芸術学部造形芸術学科
・各建築・デザイン専門学校
また、有名なインテリアデザイナーはどのような学校で学んできたのでしょうか。出身大学などをまとめてみました。
<有名なインテリアデザイナーの出身校>
・内田繁(桑沢デザイン研究所)
・片山正道(大阪デザイナー専門学校)
・倉俣史朗(東京造形大学デザイン学科)
・剣持勇(千葉大学工学部デザイン学科)
・原研哉(武蔵野美術大学大学院)
・藤江和子(武蔵野美術大学短期大学部デザイン科)
・松本哲夫(千葉大学工学部建築学科)
・吉田恵美(東京薬科大学生命科学部分子生命科学科)
※50音順・敬称略
デザインや建築系の勉強をしてきた方が多いことがわかります。インテリアデザイナーになるために必要な知識・能力は幅広いため、建築やデザインの基礎は大学や専門学校で学んでおいたほうが良さそうです。
必要な資格や受験すべき試験
インテリアデザイナーとして働くとき必須の資格はないものの、下記資格を取得しておくとインテリアデザイナーとして必要な基本的な知識や適性を備えている証明となる場合があります。
・インテリアデザイナー認定試験
インテリアデザイナー認定試験では、インテリアについての知識やデザインに必要な技術・能力を問う試験が実施されます。家具や照明に関する知識や販売技術まで幅広く出題されるため、しっかりと勉強して臨む必要があるでしょう。受験資格は特に設けられていないので、インテリアデザイナーを目指したい人におすすめの資格です。
・インテリアアドバイザー認定試験
インテリアについてアドバイスするために必要な知識を問う試験が実施されるのがインテリアアドバイザー認定試験です。インテリアに関する基本的な知識と併せて、アドバイザーとして必要な能力が問われるのが特徴です。合格基準は70%前後と比較的高く、受験資格が設けられていないので、インテリアデザイナーを目指す人はまずこの資格取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。
・インテリアプランナー試験
インテリアプランナー試験では、インテリアの選び方や配置・構成についてプランニングするための能力が問われます。基本的な知識を問う学科試験に加えて、製図の実技試験が行われるのが特徴です。合格率は学科試験が60%前後、実技試験が26%前後。実技試験に合格できるかがポイントです。
・カラーコーディネーター検定試験
カラーコーディネーター検定試験は、色の特性や色の持つ効果など、実践的な知識が身についているかが問われる試験です。インテリアデザイナーに必須の色彩感覚を磨くのに役立ちます。アドバンスとスタンダードの2つの級があり、合格率はアドバンスが63%前後、スタンダードが83%前後です。
・CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験とは、設計に使用するCADを扱う技術を問う試験です。3次元CADは1級・準1級・2級、2次元CADは1級・2級があります。回によって合格率にばらつきがありますが、3次元CAD1級の合格率は16〜50%です。設計スキルが高いインテリアデザイナーを目指すなら、取得しておきたい資格といえますね!
インテリアデザイナーになるために目指すべき就職先
インテリアデザイナーになるための主な就職先として、建築設計事務所・ハウスメーカー・デザイン事務所が挙げられます。
建築設計事務所やハウスメーカーの中には規模の大きい企業もあるため、大規模なプロジェクトに携わるチャンスを得られることがあります。インテリアデザイナーが複数人在籍していることも多く、チームで協力しながら大きな仕事を成し遂げる充実感を得られるでしょう。
デザイン事務所の場合は住宅のデザイン設計を手掛けることが多く、1軒ずつ丁寧に要望のヒアリングをしながら仕事を進めることができます。また、事務所の経営者が有名なインテリアデザイナーであることも多いので、ベテランの仕事ぶりを間近に見られる点は大きなメリットです。
インテリアデザイナーになった後のキャリアプラン
インテリアデザイナーとして一人前になるまでは、しばらく下積み期間を過ごすことになります。ここでしっかりと経験を培い、インテリアデザイナーとしての基礎を固めておくことが大切です。その後はどんな道があるのか、キャリアの例を見ていきましょう。
独立して事務所を設立する
実績が豊富なインテリアデザイナーには、指名の仕事が舞い込むようになります。自身の事務所を構えてスタッフとともに仕事をこなしていけるようになれば、より大きな仕事に取り組むこともできるはず。デザイン事務所設立は、インテリアデザイナーとして働いていく上でひとつの目標になるかもしれませんね。
教育者として後進を育成する
著名なインテリアデザイナーは、大学・専門学校の講師や特任教授などを任されることがあります。これまでに培ってきたインテリアデザインの知見を活かして学生を指導し、将来のインテリアデザイナーを育てていくことができるのです。いずれは、教える側に回ることもキャリアの選択肢のひとつとなるでしょう。
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インテリアデザイナーは室内空間をプロデュースする専門家として、クライアントが望む多種多様なインテリアをゼロから作り出す仕事です。デザインに関するスキルだけでなく、建築知識や設計力など幅広い能力が求められます。一人前になるまでに年数こそ必要ですが、形として残る仕事を手掛けられる本当に魅力的な仕事ですね。
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